2021/03/08
昔写真を撮るとき最初にすることの一つに光の量を測ることがありました。
撮影場所がどのくらい明るいかを測ります。露出計と呼ばれるライトメーターを使います。
光の量が分かるとそれに合わせシャッタースピードか絞りのどちらを優先するかを決めます。シャッタースピードは川の流れのように動くものを撮影するときは時間を止めたようにするか流れが滑らかな線のように見えるようにするかにより決めます。
続いて絞りの値を優先する場合は被写体深度が関係します。被写体深度とはどのくらいピントを合わせるかの幅を決めることです。風景写真を撮る時は深い被写体深度を選択し前から後ろまで広い幅でピントを合わせます。またポートレートなどを撮影する場合被写体の顔だけにピントが合い、背景がボケるように被写体深度を浅くします。
どちらかの値を決めるともう一方は連動して決まってしまいます。
これはフィルムの感度により必要な光の量が決っているからです。
フィルムの感度は普通はASA100でした。感度を表す数字の前にASA(アーサー)という表記が付きます。これは数字が高い方が感度が良いものです。感度が良いと少ない光で綺麗な写真が撮れるのです。
その後暗い場所でも撮影可能とASA400が流行りました。
フィルムの感度は必要な光の量を表します。
ASA400のフィルムの必要な光の量はASA100より少なくて済みます。光の量が少なくて済むと綺麗な写真が撮影しやすくなります。
これはある大きさの容器に水道で水をいっぱいに満たすことに似ています。
大きな容器に水を満たす為には蛇口を長い時間開いている必要があります。それはシャッターが開き閉じるまでの時間です。シャッターの開いている時間が長いということはシャッタースピードが遅いことを意味します。
シャッタースピードが遅いということは映像が入力される時間が長く、その間カメラが動くと手振れ、被写体が動くとピンぼけのような写真になります。
手振れは三脚を使うことで解消しますが、被写体の動きは被写体の特性により避けられません。
川面などを撮影する場合、シャッタースピードが早いと川面が止まっている写真になります。遅いと流れが止まらず、多数の線のような写真になります。
もう一つ忘れてはならないことに感度と解像度のバランスです。技術の進歩によりどんどん高い感度のフィルムが開発され、ASA100が400につづいて800さらにはASA1600のフィルムまで出て来ました。そして感度が高いものが良いものであるように思われがちですが実はそうではありません。
感度が高くなると解像度が低くなるのです。解像度が低くなると新聞に掲載されている写真のようにボツボツと点のようなものまで現れます。だからプロは敢えて低い感度のものを使うことがあります。
以前にはASA25などの低い感度のフィルムも存在しました。しかし低い感度のフィルムは多くの光が必要で長い時間シャッターを開く必要があります。つまり遅いシャッタースピードに設定する必要があります。
そんなフィルムを使えるのは動かない被写体に対して三脚を使用するときだけです。
白黒写真全盛の頃は大きく引き延ばした白黒写真に水彩絵の具で薄く色を付けて遊びました。
オートフォーカスが主流になるとやりにくいのですが、カメラのレンズの前に女性用のストッキングの切れ端を輪ゴムで止め霧がかかったような写真を撮りました。レンズの前サランラップを張り、それに模様をつけたりすると味のある写真が撮影できました。
大きなシートタイプのフィルムを使いスタジオで撮影する場合一枚撮影するのにかかる時間は数分から数十分。費用は一枚500円以上かかりました。
だから数枚しか撮影できませんでした。
デジタルカメラが主流の今では何枚撮影してもコストは変わりません。100枚も撮影すれば1枚ぐらいは傑作がありそうです。しかも撮影後に画像編集ソフトで編集できます。誰でもプロカメラマンのようです。
今のカメラは私たちがかつて一つ一つ測定し、調整し、設定していったことをほぼ完ぺきに一瞬で自動的にやってしまいます。それも一瞬で、ほとんど無料でです。
悔し紛れの屁理屈かもしれませんが、全ての設定を一瞬で行い完璧な露出の写真を
簡単に撮るとその間にしてきた努力が何だったのでしょう?
そしてその間に何かが失われたりはしないのでしょうか?
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