2020/08/26
亮君はセッションルームに入るなり窓際まで走りました。
そこにあるカーテンの中に隠れるためです。
母親が力づくで中から出そうとしますがうまくいきません。
小柄なお母さんの力ではどうしようもありません。
しばらく様子を眺めていましたが対応に困りました。
いろいろ試しましたが駄目でした。何を言っても駄目です。
時間だけが過ぎていきます。
初回はしょうがないかな、慣れるまで何もできないのかな、と思い始めている私と違い母親は何とかならないかと半ば強引に引っ張り出そうとしています。亮君はもう泣いています。
これまでに随分大勢の子供のトレーニングをしまいたが、亮君はなかなか手強い子の一人でした。その日はどう母親が頑張っても駄目でした。
2度目に来た時にもカーテンまでダッシュ。
しかし今回はそれを見越し最初からモニターに彼の好きなプラレールの動画をカーテンお中でも聞こえるように大きな音量で流していました。
しばらくほっておいたら、プラレールの動画が気になるようで時々カーテンの間から顔を出してモニターを見ます。「こっちに来たほうがよく見えるよ。」と言う言葉に誘われ、恐る恐る出てきました。
またカーテンに戻ると困るのでトレーニングを始めず、ただ動画を見てもらいました。5分ほど経つと動画に夢中になりました。タイミングを見計らいセンサーを耳に付けました。するとすぐに気付き外します。
しばらくすると再挑戦、今度は気づかないのかそのままで見続けます。2回目はどうにかこうにか5分位トレーニングが出来ました。
するとたった5分のトレーニングで家での亮君の様子が変化したそすです。いつもより扱い易くなったそうです。それで頑張る気力が増します。3回目はすんなりとトレーニングが開始出来ました。
しばらくトレーニングを続けると急に気づいたようにセンサーを引きちぎるように取り外します。5分ごとぐらいにそれを繰り返します。
それに合わせ、モニターを止めます。今度はセンサーを付けてないと動画が見れないようにしました。しばらく、取り外し、モニターが止まる。センサーを付け直すをくり繰り返しました。
発達障害は個人差が大きくニューロフィードバックトレーニングに対する反応もそれぞれです。こまで多くの子供のトレーニングをしましたが、トレーニングができなかったのは一人だけです。
その一人も遠方からわざわざ来られたのに何も出来ず、がっかりして帰りました。その子の親に古いセンサーを差し上げ、家で取り付ける練習をするように頼みました。
自閉症の子は新しいものに強い拒絶を示しますが、慣れると受け入れやすくなります。センサーを見慣れ、触り、付けてみて怖くなくなれば次回は大丈夫です。
同じ人はいないし、同じ脳もないのは当たり前なのですが、それでもやはり発達障害の症状の個人差の大きさに驚かされます。だからニューロフィードバックはそれぞれの脳に合わせたオーダーメイドのトレーニングなのです。
そしてそのトレーニングを始める方法もすんなりいかずに創意工夫が必要なことがあります。 それからやはり一番大事なことは思いかも知れません。
こちらからの好意や良くなってもらいたいという思いは伝わるようです。
亮君もトレーニングに慣れた後はセッションルームに入るとカーテンに走らず、私に駆け寄り手を握ってくるようになりました。
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